松島孝夫
株式会社エンジョイワークス 取締役
1974年栃木県生まれ。大手ゼネコン建築設計部、コーポラティブハウスプロデュース会社を経て、 2017年エンジョイワークス入社。“集まって住まう”エンジョイヴィレッジのプロデュースを始め、 設計部門から事業企画、コミュニティ形成まで全国各地で幅広いプロデュースを行う。
宅地建物取引士 / 既存住宅アドバイザー

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

課題①
不動産業の成功要因が「人気」「地価の高さ」に依存している
解決策
自社が商売を行う地域の価値を自ら高めることで自社の商機を拡大するという主体的な産業に発想を転換させている

課題②
土地が個人に所有されることで一体的な街並み形成・コミュニティ醸成が難しい
解決策
→開発と購入者(居住者)が地域価値を高める主役となる発想を持つ
→複数人で土地を購入することで、コミュニティ醸成を可能にしている

課題③
地域住民と自治体・町内会以上の関係性が作れない
解決策
共用部分を作り出すことでつながりを生み出す

課題④
戸建ての場合事業者と顧客の関係性が販売時の一度限りになってしまっている
解決策
「あえてつながりつづける」ことを意図的に取り入れたビジネスプロセスと特徴を持たせた商品を提供している

 

新しい不動産業研究所の矢部です。
この記事ではすでに「新しい不動産業」が目指す人、まちそして不動産への関わり方を実践、ご活躍されている皆様の取り組みの紹介を通じ、研究所のメンバーに①気づきと②手法と③連携を生み出すためのnoteです。
①取り組みを読んで「まずは真似してみる、やってみる」
②取り組みで使われている手法やツールを「手に入れる相談をしてみる」
③②も含め自分の事業について相談や協働依頼など「連携機会」
など研究所メンバーに新たなビジネスチャンスを生み出すことが目的です。

*今回ご紹介する取り組み・ツールに関してもっと知りたいことや、事業連携のご相談などがあればこちらよりお問合せください。

 

新しい不動産業の実践者・松島さんのプロフィール

1974年栃木県生まれ。大手ゼネコン建築設計部、コーポラティブハウスプロデュース会社を経て、 2017年エンジョイワークス入社。
“集まって住まう”エンジョイヴィレッジのプロデュースを始め、 設計部門から事業企画、コミュニティ形成まで全国各地で幅広いプロデュースを行う。

「新しい不動産業」視点で考えるキーワード

#不動産業3.0
#不動産業の民主化3.0+
#既存の事業手法を「逆転の発想」で捉える

解説。松島さん(エンジョイワークス)の実践

 

戸建分譲事業を地域マネジメント事業に変える「発想の転換」

これまでの戸建分譲事業、とりわけミニ分譲と言われる数棟から10棟未満の戸建開発がもたらす将来の課題を逆手にとって、開発と購入者(居住者)が地域価値を高める主役となる事業がエンジョイビレッジです。

不動産業の成功要因には、人気があるとか地価が高いなど「地域の価値」に依存するところがあります。従来は結果的に人気や地価の高い場所で商売をするという選択ができました。これに対して、新しい不動産業では、自社が商売を行う地域の価値を自ら高めることで自社の商機を拡大するという主体的な産業に変わってゆくことを目指すべきだと考えます。

問題解決①
過度な権利の主張が街並みとコミュニティを作りにくくする。従来型のミニ戸建分譲の問題を解消する

明治の地租改正、昭和の農地開放という二つの大改革で日本においては「不動産の所有権」に対する価値観は非常にこだわりの強い権利意識をもたらしました。それは「自分の土地」だからどう使っても勝手だし、でも他人が口出しするのは許せないという意識を生み出しました。そのような土地や建物の権利意識が根強い中で、小さく区切られた「私のもの」の主張は、一体的な街並み形成や隣人同士の地域コミュニティ醸成を難しくする「身勝手な集合体」を生み出すことにも繋がりかねません。

例えば街並み。無機質な外観と植栽あふれる外観が入り混じり、周辺との連続性や一体感を考えない自分の経済合理性や趣味を主張しすぎることで街並みを損なう場合も生じかねません。またコミュニテイの醸成でも、たまたま隣人になったけれど町内会とか自治会の名目的なつながり以上は求めず、「助け合う」「融通し合う」関係も育むことが生じにくいことで、隣人を知らない隣人関係を作り出しているとも考えられます。

問題解決②
現在と未来。ご近所と自宅。・・・「連続」を考えない商売をやめる

「買うことができる」価格を優先することは日用品を提供する商売では歓迎されることだと思います。しかし住宅は日常使うものである一方で財産形成につながる資産でもあります。「買うことができる」という側面を重視しすぎた誰でもいい、何でもいいという商売は街や隣戸との関係・間隔を限りなく狭くしてしまい、建て替えやリノベーションを不自由にしています。ワンチャンスではうまくいくミニ開発事業は将来の使い直しという「連続」を考えていないと言えます。

また、戸建の管理はマンションとは異なり、基本的に所有者の計画と意思に委ねられています。近年では、税のインセンティブをあてにした長期優良住宅認定取得に際して管理計画の策定をしている事業者と購入者もいますが、その実施については定かではありません。手に入れた住まいを家族の財産とするには継続的な手入れが必要です。これについても過去の事業者は販売時の顧客接点という一度限りを想定した事業で、将来の手入れに連続して付き合う姿勢があったかは疑問です。

地元密着の企業にこそ必要な発想。

「共用」部分を入れ込むことで「つながり」を生み出すエンジョイビレッジ
全国各地や地域内の複数エリアにまたぐ事業者にとっては、「一回限り」の分譲事業展開による過剰な敷地意識による将来の街並みの劣化や住民の関係性の希薄化、手入れしないことによる資産価値の低下は大きな問題ではないかもしれません。
でも、地元に密着する企業にとっては大きな問題です。そのようなことを繰り返せば自分で自分の畑を荒らすことになるからです。

そこで、エンジョイワークスが考えた分譲事業は「あえてつながりつづける」ことを意図的に取り入れたビジネスプロセスと商品特徴を持っています。
最たる商品特徴は、合法的な敷地権利を区分しながら「共用」空間を入れることで広々とした区割りと空地を作り出すことです(写真)。加えて、今の暮らしと将来の変化まで考慮したスケルトンインフィル型の規格住宅を用いることで購入者に初めから「連続=将来」の家族像や暮らし方を意識してもらうことです。
また、販売プロセス、販売後プロセスにも特徴があります。販売時には「共用」を許容できることを前提に見込み顧客化すること、また「家づくりから始めるノート」というアプリで設計過程には設計アイデアや進捗過程、引き渡し後には建物コンディションを事業主と購入者が「共有」し続けることです。

新しい不動産業への進化を目指す方へ。
おすすめポイントはココ。

■施主自らが設計に関わる。「関わりの価値」
■引き渡し後から始まる「関係性」

 

可能性。キャッシュポイントを増やす

(従来的な事業モデルを前提に)一見すると、なんと手離れの悪い事業なのか?と思われかねません
ですが、この事業モデルは「地域の価値を高めることが、自社の事業エリアの価値を高め、結果的に自社の商売の持続可能性を高め」ます。これこそ地域密着事業者にこそ必要な考え方と行動だと思います。
 

こんな人はぜひ

地域密着の業態で、地元の人から注目を集めたいとお考えの不動産事業者や建設事業者はぜひ「長く付き合う」ことを前提としたこのビジネスは向いているのではないかと思います。

もっと深く知りたい方は、エンジョイビレッジとは ( https://enjoy-village.com/ )も合わせてご覧ください。
2022年3月開催した新しい不動産業研究所キックオフでの登壇動画はこちら!