※記事は、2023年10月23-24日に開催された分科会を基にまとめたものです。 

新しい不動産業研究所は「民主的な取り組みを通じ(不動産業の民主化)不動産事業外にも事業領域を広げた不動産業」を目指そうというアイデアに共感をいただいたメンバーの集まりです。

普段はオンライン分科会と称して不動産業の民主化・領域拡大取り組みを共有していますが、初の試みとして「オフ会(今回は視察ツアー)」を開催、その第一弾として香川県三豊市を訪問しました。第一回目がなぜ三豊市だったのか。新しい不動産業研究所の運営主体・エンジョイワークスが不動産ファイナンスの面で街に関わっていることもありますが、それ以上に短期間に数多くの「起業」が起こった背景や実態を自分の目で確かめたいというのが大きな理由でした。
今回の視察では研究会メンバーでもあり、現地のプレイヤーの一人でもある喜田建材・島田様に丁寧なアレンジをいただくことができたおかげで、濃密な1泊2日(2023年10月23-24日)となりました。


初めて三豊を訪れて


三豊市には初めて訪れましたが、待ち合わせ場所の駅に集合した時の正直な第一印象は地方都市の例に漏れず決して各地が賑わっているという印象は受けませんでした。しかし、市内各地での事業・施設の現地を訪れ、さらに夕方の時間帯に干潮時にウユニ塩湖のような写真が撮れると話題になった海水浴場・父母ヶ浜(ちちぶがはま)周辺での取り組みを拝見して印象は一変します。年間で5000人程度しか来ない三豊市への観光客が、年間50万人を集める「まちの新たな資源(集客コンテンツ)」を得たことが契機となり資源をどう生かすかを考え、実践した成果をいくつもこの目で見ることができました。

集まる場と機会を創って関係してゆく外交的ローカル


「関係人口」という言葉をよく聞きます。定住者でもなく一見の来街者でもなく、地域の外にいながら地域の中のことに関わるような人をいかに増やそうという試みを表しています。この表現には何となく「無理やり」な印象を持っていました。
今回三豊での取り組みを見聞きして言葉に感じていた無理やりな印象を解消できました。三豊で見たものは「関係人口を増やしたい(作りたい)」と考えるのではなく、おもしろいコンテンツや機会を創ってそこに人が集まるとそれが関係人口を増やすことになっていくという好循環の作り方でした。「関係人口」をどう増やすのかは「関係」というのはどう創るのかにかかっているのです。考えてみれば当たり前で、「結果」を変えたいのであれば「方法や過程」を変えなくては異なる結果は出ません。

自分の街に投資をする


視察初日の夜に地元のプレイヤーにお話を伺った中で印象に残ったコメントがあります。それは「すべての事業を自分の街に投資している」という言葉です。地域の中で関係を生み出す機会やコンテンツは自分たちで投資をして創るものだという言葉と実践には、行政でもなく地域の外の企業でもなく地元の企業や市民が必要だと思ったもの、欲しいと思ったものを地域企業が持てる能力を持ち寄って連携して生み出している点で、「民主化」「領域拡大」のヒントが溢れていると感じました。

今回の視察で訪れた場所

 

「地域に投資をする地元企業」の一つ喜田建材さんの本社ショールーム「DEMI1/2」

喜田建材さんが投資して建てたゲストハウス「積凪」


廃業後放置され売却・取り壊し寸前で地元企業が連携して資金を出し合い、元酒蔵をリノベーションした複合施設「三豊鶴」


タクシー会社の事務所後に地域事業者 18 社が作った民間大学「暮らしの大学」


地元企業11社が資金を出し合い起業した会社で建設・運営する瀬戸内に面した貸別荘「URASHIMA VILLAGE」

「地域に投資をする地元企業」の一つ喜田建材さんが開業した「伊吹いりこセンター(ラーメン屋さん)」 


うどんを打たないと泊まれない宿「UDON HOUSE」 


古民家を改装したママ達の為の Co-育てカフェ「おむすび座」 


団欒をテーマにした薪火グリルゲストハウス「Ku;bel」 


移住者を増やす仕組みのシェアハウス「GATE」 


地元建材会社が開業した障害者雇用を目指すチョコレートショップ「RACATI」
 

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矢部智仁 (やべ・ともひと) 

#新しい不動産業研究所 所⻑ 

合同会社 RRP 代表社員 

東洋⼤学⼤学院 公⺠連携専攻 客員教授 

1987年株式会社リクルート⼊社、住宅情報部⾨に配属。2009 年からリクルート住宅総研、 所⻑として業界動向の調査、ロビー活動に従事、⾏政設置委員会の委員等を歴任。 

2014 年に建設・不動産業界を顧客とした経営⽀援コンサルタント企業に移り、地域密着企業の⽀援に携わる。 

2021 年から合同会社 RRP 代表社員東洋⼤学⼤学院客員教授(PPP ビジネス担当)、公益社団法⼈ ⽇本不動産学会監事、国⼟交通省 PPP サポーター。