「#新しい不動産業 Meetup @大阪」が、2022年3月12日、梅田パシフィックビルディングで開催された。大阪セッションの1つ目は丸順不動産の小山隆輝さん。彼が見る不動産業の風景はいつだって手に届く大きさだ。矢部智仁所⻑(#新しい不動産業研究所)が聞く。 ※ 研究所会員は全てのセッションをノーカット映像でご覧いただけます。
従来の不動産業からちょっとはみ出たところが、わたしの商圏
小山さんは、「僕は新しいことをやっていないのに、今日はなんで呼ばれたの?」と笑う。自身は昔ながらの不動産屋さんであるとした上で、新しいところで極めたいとも話す。小山さんの日常の舞台は大阪阿倍野区昭和町。1924年創業の小山商店の3代目。先代も御堂筋線の下町の狭域で商いを行なってきた。小山さんは、長屋などの既存建物をスモールビジネスの対象として活用し、エリアによき商いを誘致することを生業とする。まちを歩くと、「今日は自転車じゃないんですね?」と言われるくらい、日々、昭和町を自転車で走り回っている。
少し前に「地方のおもしろい不動産屋さん(TURNS 2018年4月号)」として取り上げられた。スーツを着て、「さすべえ」で傘を取り付けた自転車に乗って街を颯爽と行く。さすべえをご存知ない方はリンク( http://www.unite-i.co.jp/goods.html ) を参照いただきたい。さすべえは、大阪のおばちゃんの御用達だ。
Buy Local! 地元で買い物をしよう
エリアの良き商いを育てる活動として、「Buy Local」を開催。住民目線でのユニークなマーケットだ。あなたの住んでいるまちには素敵なお店がこんなにたくさんあるのだと気づかせてくれる。しっかりとお金を地域に落としていこうと言うメッセージもみなさんに伝わっている。地域のみなさんと、お店の方々で話もはずむ。お互いを知るきっかけの連続が、地域のコミュニティや商店を守っていく。
なぜ自転車なのか?半径500mの世界
小山さんの経営は、より狭く。より深く。小さな場所を一生懸命耕す経営だ。現在2km圏内を商圏としているが、さらに、より狭く。より深く。500m以内の責任をもちたいと言う。生業、家業を継ぐ、小商いの経営であれば充分な広さだと。エリアの価値を高めて、選ばれるまちを目指す。地価、路線価、価値を理解しているからこその取り組みだ。
小山さんがいるまちは、暮らすみなさんが豊かな生き方をすることができる。みんなで一緒に幸せになろうという気持ちがかたちになっていく。500m圏内では駐車場、空き地、空き家、貸地、貸家といった管理。リノベーション。DIYイベントや、コミュニケーションを通じてつくるオーダーメイドの貸家。その視点は、別のエリアリノベーションでも活かされる。Osaka Metroとのエリアリノベーションプロジェクトも進行中だ。
●登壇者紹介
小山隆輝 (こやま・たかてる)
丸順不動産株式会社 代表取締役
昭和39年8月、大阪市阿倍野区生まれ。昭和62年3月、近畿大学法学部を卒業し、大正13年創業で祖父の代から続く丸順不動産株式会社に入社。平成24年に代表に就任。町の不動産屋として地域の困りごとに対応。現在は一般不動産業務以外にも長屋や町家などの既存建物の再生活用を通じて、まちづくりやエリア価値の向上にも取り組む。 平成27年6月、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会総会にて表彰。 平成28年3月、国土交通省の「不動産ストックの再生・活用やその資金調達に取り組むための事例集」に掲載。 平成28年5月、「エリアリノベーション 変化の構造とローカライズ」(学芸出版社)を共著にて出版。 平成29年6月、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会の50周年記念式典にて講演。
矢部智仁 (やべ・ともひと)
#新しい不動産業研究所 所⻑
合同会社 RRP 代表社員
東洋⼤学⼤学院 公⺠連携専攻 客員教授
1987年株式会社リクルート⼊社、住宅情報部⾨に配属。2009 年からリクルート住宅総研、 所⻑として業界動向の調査、ロビー活動に従事、⾏政設置委員会の委員等を歴任。2014 年に建設・不動産業界を顧客とした経営⽀援コンサルタント企業に移り、地域密着企業の⽀援に携わる。2021 年から合同会社 RRP 代表社員。 東洋⼤学⼤学院客員教授(PPP ビジネス担当)、公益社団法⼈ ⽇本不動産学会監事、国⼟交通省 PPP サポーター。