日本でホテル事業を始める際の特徴
2018年からホテル事業に取り組み始めた。始めたきっかけは建設会社が5年間使わなかった従業員寮をコンバージョンしてホテル事業に転用したのがきっかけ。以降、いわゆる「再生案件」を使ったホテル事業に取り組んできた。最近では「もらってください」という空き家をベースに宿泊施設化することにも取り組んでいる。
不動産再生によるホテル事業と不動産クラウドファンディングの組み合わせ
不動産再生によるホテル事業に取り組んできた中でずっと考えていたこと。日本では「ホテル(箱)を保有する」「物件保有者から一括で借り上げる」という方法でホテル事業を開始することが多いという状況への疑問。耐用年数の考え方など金融機関の融資姿勢がそうなっているからですが、海外では「投資商品」としてホテルの一室を区分所有にして販売、資金回収をしている。それに対して、日本型の融資による調達が中心だと「次に次に」と事業を進めたくても事業展開のスピードがどうしても落ちてくる。
そこに不動産ファンドとの出会いがあった。もちろんファンドだけでは足りないこともあるけれども、うまく組み合わせれば海外で行われているような資金の集め方(あるいは資金回収の仕方)ができ、日本でも再生事業をもっと素早く展開することができるのではと考えた。
資金調達が変われば事業の価値の創り方も変わる
海外で行われているような資金の集め方(あるいは資金回収の仕方)ができ、日本でも再生事業をもっと素早く展開することができるということに加えて、所有と経営の分離が進めばホテル事業のブランド化も進むし事業価値も早く大きくできるのではないか。
ホテルは収益不動産の中でも月々よりもさらに小分けの「日々」の収益をベースにしている不動産で運営。だから投資家としても注目してきた。しかし、現在の再生型事業では「融資がつけば」という条件の下で物件を売買したり、リフォームしたりするわけですが、逆に言えば少し経済状況が悪くなって融資がつかなければ事業自体も進まなくなるし、最悪は事業自体が止まる(潰れる)。
再生事業の「その先」のビジョン
あくまでも自社(自分)は不動産会社であり不動産投資家であるから、不動産が収益を生み出すための手段をどうするか、その手段としてホテルや学校がある。もちろん、その手段がより活かされるための取り組みは余地がある。例えば広島や瀬戸内が通過点になってしまうのは、旅行を計画する段階での情報提供が足りない。それで泊まろうという気持ちを起こさせていないことが原因。
それをどう脱却するか。このところにも関わっていきたい。例えば、広島だけではなく島根や山口にも空き家を再生したホテル投資をしようと考えている。それは各地の観光スポットを繋ぐようなツアーのし方を提案することで各地の再生ホテルに連泊する機会が増えリピーターが増えるようなことになると思うから。空き家一つとっても、エアコンをつけるなどといった施設単体ではなくそれをどのように使わせるかという視野で考えないといけない。
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矢部智仁 (やべ・ともひと)
#新しい不動産業研究所 所⻑
合同会社 RRP 代表社員
東洋⼤学⼤学院 公⺠連携専攻 客員教授
1987年株式会社リクルート⼊社、住宅情報部⾨に配属。2009 年からリクルート住宅総研、 所⻑として業界動向の調査、ロビー活動に従事、⾏政設置委員会の委員等を歴任。
2014 年に建設・不動産業界を顧客とした経営⽀援コンサルタント企業に移り、地域密着企業の⽀援に携わる。
2021 年から合同会社 RRP 代表社員。 東洋⼤学⼤学院客員教授(PPP ビジネス担当)、公益社団法⼈ ⽇本不動産学会監事、国⼟交通省 PPP サポーター。