#新しい不動産業研究所の会員企業・株式会社ユカリエ(宮城県仙台市)は、「100歳になっても住みたいまちをつくる」を掲げ、不動産事業を展開しています。なかでも注目されているのが、2022年に始動した「ジーバーFOOD(株式会社ジーバー)」。一見無関係に思える“不動産業”と“シニア”を結びつけたユニークな事業です。その誕生の背景から現在の展開、そして協業を求める不動産事業者への期待までを聞きました。

■シニアがまちのみなさんに食事を届ける「ジーバーFOOD」
「『ジーバーFOOD』は、シニアが主体的に働き、地域のみなさんにあたたかな食事を届ける事業です。2022年に仙台市で1号店が誕生し、これまで延べ200人以上のシニアが携わってきました。現在は宮城県に3店舗、今年9月にはパートナー企業が運営する1号店が北海道札幌にオープンしました」と永野さん。
この取り組みはテレビ番組「ガイアの夜明け」でも紹介され、次世代ビジネスとして注目を集めています。「ジーバーFOOD」の大きな特徴は、シニアが“雇われる労働者”ではなく、自ら活動を選び、主体的に関われる点です。一般的な“シニアビジネス”のように「労働者として働く」のでもなく、「ボランティア」でもない。やりがいを得ながら収益も生み出せる、独自の仕組みを構築しています。
なぜ不動産事業者である永野さんが、この仕組みを考えたのか。その背景には「シニアを支えられる存在から、支える存在へと転換したい」という強い思いがありました。

■シニアが若者を支える社会に転換したい。足りないのは「仕組み」だ
「自分にはもうすぐ3歳になる子どもがいるのですが、彼らが大人になる2040年代は、日本史上もっとも高齢化が進む時代と予測されています。今の社会保障制度のままでは、若い世代に『挑戦しろ』『夢を持て』と言っても、現実としてかなわない厳しい構造となっていることでしょう。だからこそ、高齢者を『支えられる側』ではなく、若い世代を『支える側』に転換していくことが必要なんです」と永野さんは語ります。
「シニアの多くは、若い人のお荷物になりたくない、若い人の役に立ちたいと願っています。人は誰しも居場所や役割を求めるもの。その思いを実感してきたからこそ、シニアパワーを活かす『仕組み』が必要だと考え、この『ジーバーFOOD』を事業として形にするべく試行錯誤を重ねてきました」。
永野さんの目標は、2030年までに全国1718の自治体で「ジーバーFOOD」を展開すること。その実現には自社だけでなく、各地域のパートナー事業者との連携が欠かせません。そして、そのパートナーこそ、不動産事業者が最適だと考えています。

■不動産事業者にこそ「ジーバーFOOD」をすすめる理由
「不動産事業者と組みたい理由のひとつは、空き家活用との相性の良さです。地域に眠る空き家情報を把握しているのは不動産事業者ですし、それを拠点に変えて活用すれば収益化や地域活性化につながり、本業にも還元されます。さらに大きいのは、地域からの信頼が得られる点です。私も実感しているのですが、『ジーバーFOOD』をはじめてから、地域の眼差し、影響力が大きく変わりました。講演やメディアへの露出も増え、経済界での認知度も高まりました。結果として、不動産の相談や管理依頼、取引機会の増加など、本業に好循環をもたらしてくれているんです」(永野さん)。
ジーバーFOOD単体で短期的に大きな収益を生み出すのは難しいかもしれません。ですが、広告などに数百万円を投じるより、地域の人と汗を流して信頼を築くほうが、最終的には本業への利益を生み出すことができる。地域やまちの衰退は、不動産事業の基盤を揺るがす。だからこそ、不動産事業者にジーバーFOODとの協業をすすめたい。そう考えているのです。

■社会性と経済性の両立。だからこそ挑む価値がある
とはいえ、ジーバーFOODの立ち上げにはエネルギーも必要ですし、一定の条件が必要です。
まず、必要となるのが、地域の高齢者一人ひとりと向き合い、役割をつくり、信頼関係を育む「コミュニティマネージャー」と呼ばれる人材です。
「開業時には、専任のコミュニティマネージャーが半年間ほど必要だと思っています。また、調理のためのキッチンスペース、ビジネスとして成立させるには一定の人口規模が必要になります。ただ、過疎地であっても観光拠点のように人の交流があれば、十分成立する可能性があるのではないかと考えています」(永野さん)。
現在、宮城県のほか、岩手県・北海道・静岡県・山梨県など、各地でジーバーFOODの協業が始まっています。社会課題の解決だけでなく、新たな事業を生み出したい、地域に利益を還元したいという企業からの相談も増えています。
「地域のために役立ちたい。でも何から始めていいかわからない、という不動産事業者は実に多いのだと感じています。ジーバーFOODは、そのための具体的な方法論やノウハウ、仕組みを惜しみなく提供し、共に取り組むパートナーを募っています。全国から引き合いがあるなか、この9月には不動産事業者・リノベ札幌株式会社が運営するパートナー1号店がオープンしました。開業時は20人以上のシニアが短期間で集まったのですが、調理や接客に携わっているみなさん、本当に輝いていました」(永野さん)。
ジーバーFOODが目指すのは、社会性と経済性の両立させたビジネスです。社会にもよい影響を与えつつ、事業性としても利益を出す。どちらかに偏らず、両方を追求しながら進んでいく。「一筋縄ではいかない。だからこそ可能性を感じる」「ぜひ自社でも取り組みたい」と考える不動産事業者は、ぜひ一度、永野健太さんの思いを直接聞いてみてください。きっと「これだ!」という確信が得られるはずです。
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10月14日(火) 19時〜 @ZOOM
「ジーバーFOOD」がパートナー企業募集 不動産× シニアパワーで未来を書き換える!
登壇:永野健太 聞き手:彼末茂樹