西村 直己(にしむらなおき)
株式会社 八清 代表取締役(43歳)
京都市生まれ、京都育ち
京都工芸繊維大学大学院 卒業
精密機器メーカーにてSEとして勤務後
2005年八清入社。
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新しい不動産業研究所の矢部です。この記事ではすでに「新しい不動産業」が目指す人、まちそして不動産への関わり方を実践、ご活躍されている皆様の取り組みの紹介を通じ、研究所のメンバーに①気づきと②手法と③連携を生み出すためのnoteです。①取り組みを読んで「まずは真似してみる、やってみる」②取り組みで使われている手法やツールを「手に入れる相談をしてみる」③②も含め自分の事業について相談や協働依頼など「連携機会」など研究所メンバーに新たなビジネスチャンスを生み出すことが目的です。
*今回ご紹介する取り組み・ツールに関してもっと知りたいことや、事業連携のご相談などがあればこちらよりお問合せください。
新しい不動産業の実践者・西村さんのプロフィール
株式会社八清(もともとは呉服卸の商いをしていた創業66年目の地元密着不動産会社)の3代目である西村さん。初代は繊維関係から建築(新築の建売)へ参入、2代目(現会長)に既存住宅しか扱わないと領域転換し、現在では買い取り再販からリノベーション事業に展開、扱い対象も在来建築から京町家を中心に領域特化で差別化展開されてきました。
西村さんは大学卒業後にエンジニアとして別の仕事をしていましたが、途中から現在の八清に合流され現在に至る、いわば業界以外からの参入組です。業界外の経験が生かされているからなのか、世界中を商圏と見立てて地域商材(個性のある京都の物件)を取扱うために35名の社員のうち8名をネット集客のための要員としてIT部門に投入、あるいは外国語での交渉可能の社員も6名備えるなど、自社の特徴である「グローカル」モデルを端的に打ち出した企業経営をされています。
「新しい不動産業」視点で考えるキーワード
#不動産業3.0 #不動産業4.0 #不動産業の民主化1.0+ #不動産業の民主化2.0+ #事業領域を異業種に拡張 #多角化 #IT #グローカル
解説。西村さんの実践
「京町家をまもるための ローカルな仕組みづくり」
京都の不動産の「再生ビジネス」
先代から参入(領域転換)した既存ストックに関わる事業ですが、その中でも「特徴」を持った商品を揃えるという目的で伝統建築物(いわゆる京町家)の買取り再販を事業の中心にされています(とりわけ「美観地区」に指定されている地域での商売が多い)。
京町家の定義にはさまざまあるようですが、八清さんでは「昭和25年以前に建てられた職住一体型の建築」とされています。この定義に当てはまる京町家はまだ4万件ほどあるようですが、一方で毎年2%程度が取り壊されているそうです。職住一体型ということで現代の用途に合わせにくい、そもそも劣化が激しいなど理由はさまざまですが、言い換えれば手を入れること、取り扱うことが難しい商材とも言えます。しかし、八清さんでは、手を入れること、取り扱うことが難しいこの4万件を「ビジネスチャンスの塊」と捉えたわけです。
西村さんは自分の会社を紹介する際には「提案型不動産会社」と紹介するそうです。提供商品や提供サービスから見ると建築デザイン、設計会社、工務店と言わることもありそうですが、あくまで自社は不動産業で、使い方を含めた「提案」をした不動産商品を世に送り出すのが仕事だと捉えています(もちろん顧客に評価されればデザイン依頼や施工依頼を承ることもあるそうですが)。取り扱いの難しい商材を売れる商品に仕立ててゆくには「使い方の提案」する力が不可欠です。単なる「もの」の売買ではなく暮らしの「提案」が対価の源泉という考え方で「不動産業」の仕事に取り組まれています。
商品化(収益物件化)と自社での有効活用事業への展開(多角化)
暮らしの提案を対価の源泉(付加価値の源泉)について、西村さん自身は不動産の新しい価値の創造が仕事をする上でのテーマ・関心ごとであるとおっしゃっています。
具体的な取り組みとしては、京町家を旅館としてコンバージョンしたり、シェアハウス化したりして収益物件化して販売すること取り組んできました。また、顧客を投資家とするために国内に不在の外国人投資家でも安心できるには?という視点で管理の仕組みの設計やシェアハウスの商品化をうけコミュニティ作りやコミュニテイ活動支援も事業範囲にするなど、不動産事業の周辺に拡大・多角化されてきました。
西村さんの事業の目的は、自社の仕事、仕事の進め方を通して「京都暮らしの楽しさ」を伝え、「資産形成の支援」を実践することだといいます。それゆえ、事業の目的の一つ「京都暮らしの楽しさを伝える」たにめ、時には自社で不動産を運営する場合もあるそうです。これも結果的に不動産事業の拡大・多角化の一つの柱となっているそうです。
八清が大事にする価値観と市場創造
八清さん、西村さんの仕事における価値観を言葉で現すと「めんどうくさいと思われている仕事を丁寧にやる」といえます。これはいわゆる一般的な不動産業のイメージとは「真逆」です。を目指す。先ほども書きましたが手を入れること、取り扱うことが難しい商材である京町家ですが、その「めんどう」は多岐に渡ります。例えば、引渡し後の保証、法規制への対処、そもそも改修の困難性、「路地」に面している場合は建築の前に解体も困難、ローンがつきにくい、など複雑で多岐に渡ります。こうした現状を「面白いこと」と捉えて真面目にやることを会社の文化としているそうです。
例えばローンがつきにくい物件のローンを銀行と一緒になって開発するとか、コミュニケーション、交渉の頻度や細かさ、為替・決済・税金対処をはじめ国内の顧客よりも格段にかかる外国人との取引、コミュニティ作り・コミュニティ管理は現地に行く必要がある、入居者間のトラブルも多くそれに対処する必要があるなど一般的な不動産業から見れば儲からないことです。
しかしこうした「めんどう」なことを「丁寧」に対処する企業姿勢は、京町家をリノベーションした収益物件といった特徴ある商品を扱う「新しい市場」の創造活動そのものです。自ら市場を創りその市場で活躍する機会を広げるわけですから自社のポジションは確固たるものになりますい、仮に将来競合が出現しても競合企業との明確な差別化にもなります。
市場を創ってゆくという取り組みも進化を続けています。例えば「京町家検定」を創って町家での暮らし方や暮らしの楽しさを広めるようという取り組みや、町家の使い方・リノベーションアイデアの公開募集という取り組みなど、新しいことにも挑戦し続けています。
まさに不動産業の民主化#1.0、2.0とも言える「オープンプロセス」を実践されています。
新しい不動産業への進化を目指す方へ。おすすめポイントはココ。
八清さんの取り組みからは、周囲がやらない、やりにくいと思っていることに付加価値があることをあらためて学ことができます。また、地域の中での希少商品・サービスを発掘・発見するマーケティングを丁寧にされていることで、レアな商品の供給をされている点も強みです(賃貸戸建の考え方のようなお話(詳細は動画参照))。
可能性。キャッシュポイントを増やす
中心的なキャッシュポイントは収益買取り再販、仲介といった売買に関わる収入ですが、そこに家賃収入などを足してゆくことで換金の方法やタイミングを増やされています。
また、商品化までの時間、工数がかかるビジネスだけに、その投下価値をきちんと換金できる、つまり売値に転嫁するべく、そのための価格を評価してくれる顧客を探すことに注力するという話も参考なると思いました。加えて西村さんから学ぶ点は買い取り事業の「収支計画」をきちんと書くことだとも思います。キャッシュフローを考えた商品化の選別という言葉でもわかるようにその精密さは再販事業にとっては重要なポイントです。
こんな人はぜひ
本業は不動産業。だから「面白い物件」を探すことが事業の核だという西村さんの言葉には勇気づけられます。ローカルデベロッパーとして「新しい価値」の創造へのこだわりが表れています。
もっと深く知りたい方は、登壇動画も合わせてご覧ください
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矢部智仁 (やべ・ともひと)
#新しい不動産業研究所 所⻑
合同会社 RRP 代表社員
東洋⼤学⼤学院 公⺠連携専攻 客員教授
1987年株式会社リクルート⼊社、住宅情報部⾨に配属。2009 年からリクルート住宅総研、 所⻑として業界動向の調査、ロビー活動に従事、⾏政設置委員会の委員等を歴任。
2014 年に建設・不動産業界を顧客とした経営⽀援コンサルタント企業に移り、地域密着企業の⽀援に携わる。
2021 年から合同会社 RRP 代表社員。 東洋⼤学⼤学院客員教授(PPP ビジネス担当)、公益社団法⼈ ⽇本不動産学会監事、国⼟交通省 PPP サポーター。