河田亮一さん
加和太建設株式会社 代表取締役
1977年生まれ、1993年 三島市立中郷中学校卒業。1993年 The Colorado Springs School入学、1997年 Institut auf dem Rosenbergへ編入・卒業、2002年 一橋大学経済学部卒業。その後、株式会社リクルート、株式会社三井住友銀行を経て、2007年 加和太建設株式会社に入社。2015年より代表取締役を務める。

課題①
街の課題を解決する新たな視点・発想が浮かびにくい
解決策
人が集まる拠点を作り、社員と新たな人材の出会いを創出した

課題②:デジタル・クリエイティブ人材を確保できない
解決策
拠点で、ビジネスデザインピッチという事業計画プレゼン会など機会を作った

課題③:既存のキャッシュポイントに課題があるものの、新サービス創出機会がない
解決策
新しい仕事のやり方を率先して取り入れることで建設請負収益に加え、不動産収入や施設運営による収入を多角化を実現できた

 

新しい不動産業研究所の矢部です。
この記事ではすでに「新しい不動産業」が目指す人、まちそして不動産への関わり方を実践、ご活躍されている皆様の取り組みの紹介を通じ、研究所のメンバーに①気づきと②手法と③連携を生み出すためのnoteです。
①取り組みを読んで「まずは真似してみる、やってみる」
②取り組みで使われている手法やツールを「手に入れる相談をしてみる」
③②も含め自分の事業について相談や協働依頼など「連携機会」
など研究所メンバーに新たなビジネスチャンスを生み出すことが目的です。

*今回ご紹介する取り組み・ツールに関してもっと知りたいことや、事業連携のご相談などがあればこちらよりお問合せください。

 

 

新しい不動産業の実践者・河田さんのプロフィール

3代目として地元建設業を引き継いだ河田さん。建設業は「ものづくり」産業の代表格であり建設業の存在は地域になくてはならないという誇りを持たれています。

志とは裏腹に、経営を引き継いで以降、まちの姿が変わり元気がなくなってゆく様子を目のあたりにしました。そんな状況を変えて地域を元気にする、地域を活性化するには行政だけではなく民間にも先導する役割がいると感じていました。
その先導役、ロールモデルとなる産業は何か。それこそ建設業がまちづくりに関わるような姿勢を見せなくてはならない、そう考えるようになったそうです。

「新しい不動産業」視点で考えるキーワード

#不動産業1.0
#不動産業2.0
#不動産業3.0
#不動産業の民主化3.0+
#不動産業の民主化4.0+
#現在の事業領域を深める
#まちなか不動産の家守

解説。河田さんの実践
 

 

業界を、周囲を変えるにはまず自社から

建設業がまちづくりに関わる先導役になる。
そう決めたものの先導役になるには「ものづくり」の役割を担うだけでは不十分です。言い換えれば地方建設業自身が企業姿勢や事業領域を変えることが必要だと考えたそうです。
公共土木の請負や公共施設の整備を担う「ものづくり」に加え、地域の施設の運営を担う「ことづくり」、さらに建設業だけではなく不動産事業(分譲、賃貸、街中開発)にも進出して「まちづくり」も担うこと、そのために建設業を改革しなくてはならないという「志」を立てるに至りました。

まず着手したことは「人を集める」ために街の中に拠点、楔(くさび)を打つことです。
河田さんの発想の根底には、新しい人、特に新しい技術を持った人を集めて関係者として巻き込むことで、街中の課題に対する新しい視点・新しい発想・新しい解決方法を見出して街を発展させようという考え方がありました。

その第一歩として人を集める「拠点」を作ることから着手されました。中心地の商業施設整備、街中の空きビル、空き店舗の借り上げとコーワーキングスペースなどへの転用、遊休化した公的施設の再活用などに資金や人材を投下するとともに、それらのスペースを自社のサテライトオフィスとして社員を街中に配置しました。
こうした中で社員と新たな人材の出会いが生まれ、閉ざされていた空間が再び街に開かれたことで、その場所を目指す人材が集まり更なる出会いが生まれ始めました。

街を変え、業界を変えるのに必要なことを見定める。
建設業の改革にもつながる視点で「デジタル・クリエイティブ」に注目

先ほども触れましたが、新しい人、特に新しい技術を持った人を集めて関係者として巻き込むことで、街中の課題に対する新しい視点・新しい発想・新しい解決方法を見出して街を発展させてゆくという発想で、河田さんは三島に、そして自社・業界の将来に何が必要かを考えました。
三島にとって、そして建設業にとっての答えが「デジタル」「クリエイティブ」でした。

注)街に人を集める、集めた人が持っている「それまでそこになかった技術」とはデジタルとかクリエイティブといった先進的なイメージのものでなくても構わないと思います。例えばパン作りや調理がもしこそに必要でそれまでなかったのであれば必要な技術と言えます。

 

河田さんが「新しい人、特に新しい技術を持った人」としてとりわけ注目するのはデジタル人材、クリエイティブ人材の誘致です。
こうした技術を持った人材とつながることで建設業のデジタル化をも促し、業界の生産性を高めて街の活性化に貢献できる建設業に生まれわってゆく。そのような考えを実行に移すために、街中に整備した拠点にはそうした人々を集め、ビジネスデザインピッチという事業計画プレゼン会など機会を与えつことで金融や異業種など街の多様な人材とクリエイティブ人材との接点を創造しています。

本業の革新・進化・挑戦も怠らないこと

街中オフィスや新しい技術を持った人材との交流や協働に取り組む一方で、例えば新しい公共施設整備の発注方法であるPFI事業にも積極的に参入されています。

冒頭に示した公共土木の請負や公共施設の建築整備を担う「ものづくり」に加え、地域の施設運営を担う「ことづくり」、さらには建設業だけではなく不動産事業(分譲、賃貸、街中開発)にも進出して「まちづくり」も担うことをまさに実践されているのが、地元の道の駅事業における場の運営事業です。施設整備にとどまらず施設の運営に入ることでものづくり産業からことづくり産業、さらにはまちづくり産業への進化を「率先」されています。

新しい不動産業への進化を目指す方へ。
おすすめポイントはココ。

■まちなか不動産のオーナーとしての家賃収入
■事業の開発、挿入による事業収益

 

可能性。キャッシュポイントを増やす

新しい人材との出会いは、新しい収益源となるサービスを生み出す機会になります。同時に、新しい仕事のやり方を率先して取り入れることで建設請負収益に加え、不動産収入や施設運営による収入を多角化を実現できたこと。さらにはそれに対応して社内の人材の能力発揮機会も多様化できたことが将来の経営にとって大きなことだと言えます。

こんな人はぜひ

誰にでも自分の「本業」本分へのプライドがあります。特に地域の基幹産業である建設に関わる仕事では尚更でしょう。
しかし世の中が変われば求められる役割や期待される機能が変わることは当然です。そのように変化が求められる際に「プライド」が自らの変化を邪魔してしまうようであれば、それは周囲にとっても自らにとっても損失です。

でもプライドを捨てるということは簡単ではないですし、むしろ難しいことだと思います。であれば、今できることを「基盤」として、さらにできることを追加してゆくという発想を持つことです。
その際、できることを「なんでもいいからただ増やす」のではなく、自分の街、地域の発展に貢献できることを増やすことができれば、尊敬され、持続可能性の高い企業として生き残ることができるのではないでしょうか。

もっと深く知りたい方は、登壇動画も合わせてご覧ください