株式会社TYOは誰もが一度は見たことのあるCMを制作してきた動画制作のプロフェッショナル集団です。近年では動画を核に、MV、ステートメントムービーなど制作の幅を広げていらっしゃいますが、不動産業とはまったく異なる業界といってもいいでしょう。では、なぜ#新しい不動産業研究所に参画しようと思われたのでしょうか。外から見た視点で、不動産業や地方の可能性を伺いました。
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【インタビュー内容】
▼なぜ#新しい不動産業研究所へ参画したのか
▼言語や価値観の違いを超えて、伝わる/伝える。動画の持つ価値
▼地方には金脈が眠っている。ボトムアップで盛り上げることも可能
▼プロが伝授!地方・地域の情報発信するときの極意
▼現在、注目している地域。そして新しい不動産業研究所に期待すること
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▶︎なぜ#新しい不動産業研究所へ参画したのか
私どもは40年以上、動画、もっとも身近なところで言えばCMなどをプロデュースしてきました。高度成長期は広告を制作し、クライアントの商品を購入してもらえることが、社会に対してプラスになっていましたが、成熟期に入った今、購買意欲を喚起することだけが価値ではなくなりました。では、我々は映像・動画を使って何ができるのか、社会に対してプラスに働きかけるにはどうしたらいいのか。新しい事業の可能性を探っていくうちに、出てきたのが「地方」や「地域」という事業です。
地方に眠る魅力を動画で表現したシリーズ「Another Side of Japan」
日本の地方・地域にはとても魅力があるのに、なかなか伝わりきっていない。また日本全体で人口が減っていくのであれば、地域内、日本国内だけに伝えても意味がない。そして、こうした地域と直結しているのが不動産業です。地方や地域の価値が上昇すれば、不動産業も比例して盛り上がっていく。であれば、こうした地方や地域の不動産業の方とともに勉強していくことで何か学びや収穫があるのではないか。それが今回、参画した理由です。
▶︎言語や価値観の違いを超えて伝わる/伝える。動画の持つ価値
動画の良さを端的にまとめると①ノンバーバルコミュニケーション、②記憶に残ること、この2つに尽きます。
①ノンバーバルコミュニケーション(非言語コミュニケーション)の方法として、映像は感覚的に伝えることができます。言語や国籍などのさまざまなボーダーを超えて、多くの人に「思い」を届けることができます。
②「記憶に残ること」についてですが、CMというのは、その特性上、見たあとに行動を促すことが求められます。そしてCMを視聴して商品を買うまでには、必ず時間差が生じます。だからこそ、しっかりと記憶に残らないといけません。そして、人はストーリーで記憶するという特性があります。だからこそ、視聴した後の気持ちーー我々は読後感と呼んでいますが、ストーリーで記憶してもらい、読後感を残す。この一点のために、日々、粉骨砕身しているのです。
記憶に残るという意味ではSNSの「バズる」と似ていますが、中身は異なります。私たちにとって、バズは手段であって、目的ではありません。単にいいね!やlikeでは、実際に人に行動を促すことはできません。言葉を添えてRetweet・ポストするくらいが、「記憶に残る」ということ。そして、動画・映像は記憶に残り、行動を促しやすい表現手法だと思っています。
▶︎地方には金脈が眠っている。ボトムアップで盛り上げることも可能
それにしても、土地・不動産というのはおもしろいですね。価値基準が曖昧というか、絶対的な根拠ではなく、煎じ詰めていけば「なんとなく」「イメージ」で決まっている印象があります。東京でも北海道でも1平米の利用できる広さは同じなのに、都心一等地と地方の山林では地価はまったく異なる。不動産業の方には当たり前かもしれませんが、これは大変なことだと思っています。
今、既存の価値が揺らいでいますが、例えば駅から離れている土地、東京から離れている土地は、本当に価値がないのでしょうか。例えば、オーガニックファームができるとか、コミュニティアパートができるとか、古民家で活動するアーティストがいるとか、地域の人たちのボトムアップの価値創出、地価上昇というのは広まっていくような気がしているんです。大きな金脈がある、とでも言いましょうか。
地価の高い都市部であれば、都市で営み維持していくための労働になりますが、生活コストが抑えられる地方や地域であれば、クリエイティブに生きることが可能です。地方で活動しているクリエイターは我々がキャッチしきれてない、見つけきれていないだけで、実はたくさんいるのではないでしょうか。
だから、今、価値がないと思われているもの、困っている、行き詰まっている場所にこそチャンスがいっぱいある。そんな気がしています。
▶︎プロが伝授!地方・地域の情報発信するときの極意
スマホの登場により、現代では誰もが発信できるようになりました。反対に言えば発信してもらえないと、見つけてもらえない。だからこそ、皆さまには地元や地方の魅力を積極的に発信してほしいと思います。発信していくことで地域と地域のつながりができますし、たくさんの接点を持つことで「外」の目線を獲得できるはずです。
発信の極意としては、カッコつけずに等身大で発信していくこと。嘘はつかないこと、そして身内の楽屋話をしないことでしょうか。あくまで自然体の情報発信が求められている気がします。
前提として、動画でもテキストでも、遠い国のまったく知らない人に伝えるということを意識した方がいいですね。例えば、名物の城下町の祭りといっても、メキシコの小さな村に暮らすおばあちゃんには、その価値は伝わりません。だからこそ、「この地域に昔、王様がいて目の病気に悩んでいた。カエルにお祈りしたところ回復したため、お祭りがはじまった」。こんな風に、遠くの人にストーリーにして伝えることが大切だと思います。
こうして発信をすることで、外側の視点を獲得できますし、「ここいいですね!」と再発見・再評価されることで、そこで暮らす人の誇りにもつながっていく。地方・地域の人にとっては、外からの目線・視線は絶対的に必要だと思っています。
▶︎現在、注目している地域。そして新しい不動産業研究所に期待すること
現在、注目しているのは香川県三豊、あとは日本海側、主に北前船が行き来していた地域です。これらの地域は主に高度経済成長期の乱開発を免れていて、「プリザーブド」、いわば古来の日本が保存されている地域。中世〜近世、江戸といったかつての日本の暮らし、価値観、生業、慣習などが残っていることがあります。これらをローカルデベロッパーが再発掘して、価値として残し、発信できたらと思うとワクワクします。
石川県珠洲市での取り組み「みんなのウマ」。馬と人、そして珠洲の魅力が凝縮されている
弊社では、石川県珠洲市の「みんなの馬」のステートメントムービーでも取り上げていますが、能登半島にも注目しています。石川県珠洲も北前船の寄港地の一つであり、日本文化を保存する地として典型的ですよね。2024年に能登震災があり、現在は中断していますが、能登はまさにこの「プリザーブド」された地域です。半島という地勢上の特徴もあり、高速道路は走っていますが、離島のように独自の文化が残されています。
こうした「プリザーブド」された地方は、才能を必ずインスパイアし、人々のウェルビーイングにつながってくることでしょう。田舎が洗練されていない、ダサいというのは、かつての価値観。私から見れば地方や田舎は宝の山です。日本各地で不動産事業に取り組む皆さまとともに、たくさん学びたいと思っています。