※記事は、2024年1月22日に実施した、1月分科会の事前インタビューを基にまとめたものです。 

#新しい不動産業研究所とは


新しい不動産業研究所とは、不動産事業の取り組む企業や個人が、従来の取り組み領域だけにとらわれず(業の領域拡大と呼びます)、不動産オーナーや使い手さらには地域市民からの共感を得て時に協働しながら事業を進める(業の民主化と呼びます)ことができる事業者へと自身をアップデートするために仲間が集い知見やノウハウを高めあう場です。

㈱和み・古田氏に聞く。


多様な関係者は「面倒な存在か」 
まちづくり、地域おこし、空き不動産の活用に必要な資金をどのように集めるか。最近では多様な集め方があるわけで、その一つにクラウドファンディングがあります。それ以外にも借り入れをはじめ「資金調達のやり方」って多様な選択肢がある中で、一つの見方として、ステークホルダーが増えることは、実は手間が増えることになるのでは、という見方があります。 
それについて、和歌山でまちづくり、地方創生に取り組む㈱和み・古田さんに伺いました。 
古田さんは「確かに面倒なところもあるけど、一方で多様な関係者を作ることには意味がある」と言います。さらに「自分一人では何もできないし、小さな力しかない。そう考えているからいろんな人を巻き込まないといけない。もちろん、指摘の通り出資してもらうのは気を使うところもあることはあるけど。」 ともおっしゃいます。 
言い換えると、お金や説明責任の手間を上回る「連携することの価値」があるということです。


不動産の価値はどうやって創られるか、をきちんと理解する


実は古田さんはもともと不動産鑑定士としてのお仕事をされ、その後不動産ファンド運営にも携わっていました。 
どちらも不動産の保有価値や利用価値の経済合理性を追求するようなお仕事です。個別の不動産の価値をどう最大化するのか、そんな業務経験を持つ古田さんが東京から地元に帰ってきた際に直面したことは、すでに人が減ってしまっているような場所では町全体がある程度良く(経済的にも活動が活発に)なならないと個々の不動産が死んでしまう。逆に言えば、個々の不動産価値を最大化させるためには、まちづくりを本当に考えていかなければ実現しないと実感したそうです。  
都市部の一等地のように保有すること自体に価値がある場所とは違い、そうでない場所で価値を見出すためにも利用価値、つまり不動産が生み出すキャッシュフローを見いださないといけないと思い至ったそうです。


「面倒でも」関係者を巻き込むことが価値につながるという覚悟


きっかけはカエルの港プロジェクト 
古田さんが地元に戻られて初めに取り組んだのが、漁港の倉庫をリノベーションして活用したカエルの港プロジェクトだったそうです。漁港にあることで、出資してもらうわけでもないにも関わらず地元の漁業組合はもちろん漁師さんや組合長さんとの関係は避けられず、そこで事業をする以上、自分一人では進まないという経験からスタートしたそうです。人を巻き込んだら当然色々言われるし、特に漁業関係者はストレートな物言いもされます。 
でもその時の古田さんの経験は、相当しんどい話だけど覚悟というか決心が座っているかどうかが一番大事だと実感したそうです。 と同時に、覚悟が座れば、小さな地域の中で良い連携が生まれると考えているそうです。例えば産直施設の経営を考えれば、出資関係の有無にかかわらず地元の漁師さんや農家さんとの「関係性」は仕入れ先と販売業者という関係だけではなく、それ以上に「事業を一緒に営む仲間」としての関係を作ることで「一緒に」地域の利益を生み出し分かち合う関係になり、利益が生み出されることで不動産の価値を顕在化させ、地域の価値を高めることにつながると考えるのだそうです。

まちづくりに取り組む際の資金調達とステークホルダーとの関係作りという視点でお話を伺いましたが、その本質的な視点の一つとして、古田さんの縮退市場における不動産価値の捉え方に学びをいただくことができたインタビューでした。 
 
■株式会社和み とは?
https://www.nagomi-rea.co.jp/

■カエルの港プロジェクト とは?
https://www.nagomi-rea.co.jp/kaeru.php

■NagomiLab.ー和歌山市のコワーキングスペースー とは?
https://nagomilab.net/

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矢部智仁 (やべ・ともひと)

#新しい不動産業研究所 所⻑
合同会社 RRP 代表社員
東洋⼤学⼤学院 公⺠連携専攻 客員教授
1987年株式会社リクルート⼊社、住宅情報部⾨に配属。2009 年からリクルート住宅総研、 所⻑として業界動向の調査、ロビー活動に従事、⾏政設置委員会の委員等を歴任。
2014 年に建設・不動産業界を顧客とした経営⽀援コンサルタント企業に移り、地域密着企業の⽀援に携わる。
2021 年から合同会社 RRP 代表社員。 東洋⼤学⼤学院客員教授(PPP ビジネス担当)、公益社団法⼈ ⽇本不動産学会監事、国⼟交通省 PPP サポーター。