3月17日、#新しい不動産業研究所では、「まごころアパート松葉台」(横浜市神奈川区、総戸数10戸)の現地視察ツアーを開催しました。不動産事業者はもちろん、建築やメディア関係者も参加し、盛況となった視察ツアーの様子をレポートします。

◆取材や遠方からの申込も。注目度の高いまごころアパートプロジェクト

「まごころアパート」は、「高齢者の見守り」「おしごと」「コミュニティ」などを備えた、新しい高齢者向けの住まいです。

 

第一号となる「まごころアパート松葉台」は、新築アパート(4戸+シニア支援拠点)と、築約30年のアパート(6戸)をリノベーションした2棟構成。2棟の間には、通り庭やデッキ、パーゴラを配置した「ミチニワ」があり、入居者だけでなくご近所の方々との交流の場となる設計です。

まごころアパートの特長や狙いは、端的にまとめると以下の通りです。

<高齢者のメリット>
・住み慣れた地域で暮らし続けられる
・暮らしのサポート「まごころサポート」を受けられる
・防犯・健康面での見守りがあり、安心して暮らせる
・所有していた持ち家を売却して入居することで、金銭的なゆとりが生まれる
 

<コミュニティ活性化・社会とつながる設備・仕掛け>
・Wi-Fiを活用した最新の見守りセンシング
・日常のお困りごとを解消する「まごころサポート」
・地域とのつながりとおしごとを生む「ジーバーfood」
・コミュニティを醸成する動線設計
 

<建物の利活用>
・高齢者が心地よく安全に暮らせる住空間
・既存アパートの改修・活用
・在宅介護ステーションとしての機能をプラス


今までにない工夫を詰め込んだ高齢者住宅とあって、各方面からの関心は高く、視察ツアーには不動産事業者に加え、建築関係者やメディア関係者も多数参加。注目度の高さがうかがえるイベントとなりました。

 

◆見学ツアーの流れ 〜説明・ルームツアー・質疑応答〜

今回の視察ツアーでは、まごころアパートの運営に関わるMIKAWAYA21株式会社 社外取締役の平川健司さん、設計を担当した株式会社オンデザインパートナーズ代表の西田司さんが登壇。司会進行は、新しい不動産業研究所の矢部所長が務めました。

第1部は、もっとも大きな居室に集合し、エンジョイワークスの松島孝夫から開始のご挨拶。続いて、「まごころアパート」の誕生背景、居住サポート住宅制度、設計・デザインの工夫について、多角的に解説・深掘り。理解を深めていきます。

 

第2部は、2グループに分かれてルームツアーへ。

各部屋にはテーマカラーが設定されており、室内に設置されたWi-Fiセンシングシステムや、介護・看取り対応の工夫など、実際の設計意図を伺いながら見学しました。

■気づかない! Wi-Fiセンサーによる見守りシステム
室内に設置されたWi-Fiセンサーはコンセントタイプで設置されており、プライバシーを守りながら見守ります。センサーが入居者の生活リズムを把握し、異常を検知するとアラートを発します。もちろん、コンセントタップとしても使用可能。言われなければ気が付かないほど、違和感なくとけこんでいました。

■看取りまで対応できる設計
部屋は一見すると一般的な居室ですが、動線設計により排泄を含めた各種介護がしやすく、ベッドサイドには医療機器の設置も想定。看取りまでを見据えた住まいになっています。

■コミュニティスペース「ミチニワ」
2棟の間に設けられた通り庭「ミチニワ」や、中庭スペースは地域にひらかれた交流の場。リノベーション棟にはシースルー扉を採用し、自然に目線が交わる設計とするなど、心地よいつながりを可能としています。設計による心地よい「距離感」をかなえています。

■気持ちまで明るくなる色使い
建材は一般的なものを使用しながらも、デザイン性を重視。イエロー、グリーン、レッドなどテーマカラーが各住戸に設定され、住む人の気持ちが明るくなる工夫が施されています。

視察後は30分間程度、質疑応答〜交流タイム。
「入居審査はどうなっているか」「まごころアパートを始めるにはどんな物件が適しているか」など、活発な質問が寄せられました。

◆コミュニティ醸成のため、入居審査を実施

まごころアパートは、コミュニティ形成をする集合住宅です。そのため、入居者の人柄重視し、入居契約前に審査と面談を実施予定だそう。周囲との調和を重視し、「お互いに心地よい関係」を築けるよう配慮しています。

契約形態は、まず定期借家契約とし、将来的には終身建物賃貸借契約への移行を想定。賃料は相場よりもやや高めですが、見守り・サポート付きの付加価値があり、2024年10月以降には「居住サポート住宅」制度への認定申請も予定しています。
今後の社会や家族のニーズに応える新しい住まいのかたちといえるでしょう。

◆まとめ

「まごころアパートプロジェクト」は企画から設計、入居支援まで、不動産事業者との接点が非常に多いプロジェクトです。特に今回の視察では、「既存アパートのリノベーション」という視点に関心が集まり、不動産再生の新たな手法としても期待されていることがわかりました。

高齢者人口の増加が続くなか、人とテクノロジーが共に見守る「まごころアパートプロジェクト」。2号棟、3号棟と増え、今後ますます注目される存在になっていくのではないでしょうか。